何となく神秘的な感じのする「水中分娩(水中出産)」。気になっているママもいるかもしれません。ここでは、水中分娩について書きます。大事な事は、水中分娩は一般的には勧められていない方法だということです。自分にとってのメリットデメリットをよく考えて選んでください。
水中分娩とは?
水中分娩とは、「温水プールや浴槽を利用して、水の中で子どもを産む」というものです。1980年代にフランス人産科医のミッシェル・オダンが広め 、痛みを和らげる分娩法の一つとして実施されています。
水中分娩のメリットとデメリット
水中分娩にも、メリットデメリットがあります。医学的にはまだ研究中であり、水中分娩のメリットが大きいとは言えません。
メリット
- 浮力があるため、水中では自由な体位がとることができる
- リラックスにより、鎮痛・鎮静効果が期待できる
デメリット
- 赤ちゃんが水を飲んでしまい、おぼれる可能性がある。肺炎になるリスクもある。
- 子宮に感染を起こすことがある。特に胎盤が水中で娩出されてしまうと、母親の命に関わることもある。
赤ちゃんの感染の事例としては、1999年に自宅の24時間風呂での水中分娩で生まれた女の子がレジオネラ肺炎を発症し、死亡しました。水中分娩は陸上での出産よりも感染のリスクは高くなります。
24時間風呂での水中分娩後発症した新生児レジオネラ肺炎の1例(IASR)
http://idsc.nih.go.jp/iasr/21/247/dj2474.html
ママの感染の事例としては、私自身が経験しました。出産して数日後に敗血症性ショックになって、私の勤務していた病院へ搬送されて集中治療室での治療が必要になりました。赤ちゃんだけではなく胎盤も水中で娩出したために、子宮の中にプールの水が入り込んでしまい、そこでばい菌が繁殖してしまってショック状態になったのです。自然が第一という考え方の助産院だったために、プールの消毒を ”塩” で行っていたというビックリな事例でした。(もちろん、これは消毒ではなく、ただのおまじないです)
水中分娩では、胎盤はプールの中ではなく陸上で出すことが安全のための必須条件ですし、プールや水の消毒がしっかりしてあることは絶対に必要な条件です。
水中分娩の実際
- お湯の温度は36.5℃ぐらい。入水する前にNST(胎児心拍モニター)にて赤ちゃんが元気であることを確認しておく。
- 陣痛が始まって、2時間以内で産まれると判断されたタイミングでプールに入る。初産婦なら子宮口全開大、経産婦なら子宮口5-6cm以上開大した頃になる。
- 入水中は耐水性のNSTモニターをつける。15分おきに胎児超音波心音計で心拍を確認することでも可。
- 分娩したら、ママに赤ちゃんを抱っこしてもらって、そのままプールの外に出る。
- 胎盤はプールから出て、陸上で娩出させる。プール内で胎盤娩出させると子宮内感染を起こすことがありリスクが高い。
- ベッドで休んで、産後の出血が大量にならないことを確認する(これは通常分娩と同じ)。
産院選びのポイント
分娩で一番大事なのは、ママと赤ちゃんが無事に退院できることです。
水中分娩には、陸上でのお産にはないリスクがあります。事前の説明で、水中分娩のリスクや万が一の時の対応まで具体的に伝えてくれるところなら信頼できます。メリットばかりを強調するような産院は、危険です。
最低限、以下のようなことを確認しておきましょう
- 水中分娩をトライできる人とできない人の基準
- 使用するプールや浴槽、水の消毒方法
- 水温管理はどのように行っているか
- どんなときに水中分娩を中止するのか
- 分娩中の赤ちゃんの心拍の確認方法、その頻度
- 胎盤は水から出てから娩出することになっているか
- 赤ちゃんやママが感染症になってしまったときの対応
まとめ
水中分娩には、メリットもデメリットもあります。
そもそも医学的には勧められていません。
水中分娩をトライする人は、しっかりとした体制と経験のある施設で行うようにしましょう。分からないことがあったら医師や助産師に聞いて、決めるようにしましょう。